ゲラウト!

困難に立ち向かい、ただひたすらに遊べ!

2014年ビジョナリー・カンパニーから学ぶこと

遅ればせながら、「ビジョナリー・カンパニー」を読んだ。
20年近く前に書かれたものながら、しっかりと現代でも通用する内容なのは、本書でも宣言されている通りだ。
とても良い内容だったので、Outputしてみる。

永遠に動き続ける時計をつくる

ビジョナリー・カンパニー。先見性ある会社。

これを作るには、なにも優れた指導者が必要なわけでも、素晴らしいアイデアが必要なわけでもない。必要なのは企業文化だ。

「時を告げるのでは無く、時計をつくる」

本書ではこのように表現している。
カリスマがいるとチームがまとまる。会社も明確な指針のもと舵を取りやすいだろう。しかし、それは一代で終わってしまう。カリスマ一人に支えられた会社は、もろく、先見性があるとは言えない。

指導者は、自分が居なくとも存続する仕組みを作り上げるのだ。

これは企業エンジニアも同じ。

リクルート活動では企業の優秀な技術者が、転職希望の優秀な技術者を引き寄せるというが、これにもやはり限界があるのではないだろうか。特定の技術者に依存し過ぎて、未来に渡り技術者のレベルが安定するとは思えない。社員の教育、技術に重きを置いた会社方針など、会社の中で優秀な技術者を育てる仕組みが必要なのだ。

そのために用意するのが基本理念である。

絶対に守りぬくルール

会社として何を目指したいのか。社会にどのような影響を与えたいのか。
基本理念は、その会社で働く者全ての羅針盤となる。それは、会社が立ち往生した時、局面打開を探る時、道を照らす光となるものだ。

そして、重要なのがこれを守ること。
この基本理念に賛同できないものは淘汰される。ビジョナリー・カンパニーでは、それほどの絶対感が基本理念にあるのだろう。

先見性(ビジョナリー)とは、やさしさではなく、自由奔放を許すことでもなかった。事実は全く逆であった。ビジョナリー・カンパニーは自分たちの正確、存在意義、達成すべきことをはっきりさせているので、自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員が働ける余地は少なくなる傾向がある。
(『ビジョナリー・カンパニー』 P.203)

これは、かなり的確なんじゃないかと思う。
Appleはこの手の話が有名だけど、自由奔放に思われるGoogleも、中の人に言わせると「良い面だけじゃなくて、結構つらい面もある。」のだそう。
だからこそ同士が集まり、強力な理念を共有できるようになるものなのだろう。

また、会社が打ち出す方針は、必ず基本理念に通じていないといけない。
例えば、「社員の成長」を謳いながら社員教育が後手に回っているなど、あってはならないのだ。
ここに一貫性がないと、理念に対し冷ややかな意識を持つ社員が生まれてしまう。「きれい事言って」などというやつである。

すなわち企業理念とは抽象的なものであり、その要素を強く厳しく、会社の隅々にまで行き渡らせることが大切なのだ。

あえて荒波を進む

本書ではBHAG(Big Hairy Audacious Goals)と表現されている。
所謂、社運を賭けた大胆な計画だ。

その一例として本書で挙げているボーイング社の行動が面白い。

1952年当時、ボーイングの主力顧客は空軍。軍用機は全体売上の4/5を占めていた。そんな中、「ボーイングは民間航空機市場で大手になる」という大胆な目標を掲げる。そして旅客用ジェット機の開発に全力を投じた、というもの。
この結果は、皆さんご存知のとおりだ。

BHAGは人々の意欲を引き出す。人々の心に訴え、心を動かす。具体的で、わくわくさせられ、焦点が絞られている。だれでもすぐに理解でき、くどくど説明する必要はない。
(『ビジョナリー・カンパニー』 P.156)

まさにBHAGを行う理由はここにある。
社員一丸となって大業を成すためには、大きな目標、大きな夢、それに本気で取り組む風土が必要なのだ。

このようにBHAGは明確な目標(戦略)を使って会社を成長させるものだが、ビジョナリー・カンパニーではさらに 「進化による進歩」 も重要な成長手法として実践しているそうだ。
「進化による進歩」とは現状の業態に縛られず、さまざまなチャレンジを繰り返すこと。ダーウィンの進化論のように社会の変化に適していないもの(サービス)は淘汰され、残されたものがさらに進化を続けるというものだ。

これは例えば、現状のサービスで満足しない、自分たちが作った、通った道をも疑う意識などと同じ事だろう。
これがないと、いずれイノベーションのジレンマによって衰退する可能性がある。進化に備えることは、永続する企業にとってとても大切な意識なのだ。

現状に満足せず自身に厳しくあるのは、様々な社員がいる大企業ではとても大変なことだろうと思う。これを受け入れる風土は、それをつくる基本理念がしっかりと根付いているからこそできるものなのだろう。

ORの抑制に負けず、ANDの才能を活かす

企業としてどちらかを選択するような場合、

「低コスト」か「高品質」
「変化」か「安定」

ビジョナリー・カンパニーが取る行動は、会社にとってどちらも必要ならば、その矛盾を無視するという。

「低コスト」も「高品質」も
「変化」も「安定」も

どちらも手に入れる方法を見つけるのだ。

これは、ビジョナリー・カンパニーが「自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員が働ける余地が少ない」ながらも、業務上、幅広い自主性を社員に認めている点からも見て取れる。

本書では、理念に従うことを厳しく管理しているノードストローム社社長のエピソードが挙げられている。

ドレスの返品に対し店員がどう対処するか、わたしにはわからない。それが性格な答えだ。しかし、顧客がていねいな対応とサービスを受けたと感じる方法をとると、わたしは強く信じている。

(中略)

ノードストロームでは、基本的な価値と基準を守ってさえすれば、仕事を進めるために何をやってもいい。
(『ビジョナリー・カンパニー』 P.233)

ビジョナリー・カンパニーというものは、永続する仕組みが備わっている企業だと思う。不変かつ一貫性ある基本理念の基、矛盾を作らず、概念に囚われず、企業が良しとする方向に企業そのものを向けることができる。そうすると、自ずと企業内の従業員も同じ方向を向き、あとは、その従業員が「それぞれの」方法でもって企業を動かすのだ。

冒頭でも書いた通り、この流れは21世紀も続く勝ちパターンだ。企業だけでなく、チームにも適用できる勝ちパターンだ。

早速、自チームの基本理念を考えてみる。